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胃がん検診の精度を測定するため、地域がん登録資料と照合することで、検診の受診の必要性と精検測定のために地域がん登録データを用いることが有効だと分かった[2024.03.28]

胃がん検診の精度を測定するため、地域がん登録資料と照合することで、検診の受診の必要性と精検測定のために地域がん登録データを用いることが有効だと分かった

分野 2.がん検診(2次予防),5.疫学研究・研究推進
活動時期 1993年~1994年
活動地域 兵庫県
活動主体 兵庫県地域がん登録
 
背景 がん検診の効果的実施のためには検診の精度管理が重要である。間接X線撮影による胃集団検診の精度を知り、見落とし例があるならばどのような症例が多いかを検討し、撮影法の改善、読影力の向上を図る必要があった。
主な活動内容 1. 地域がん登録ファイルと兵庫県立成人病センター検診センター実施の胃集団検診受診者ファイルとの記録照合により検診後に発見された胃がん患者を抽出した。
2. 胃がん発見活動時期、手術所見、病理所見、予後を調査した。
3. 集検時の間接写真を振り返って再読影し所見の有無を検討した。
4. 胃集団検診の精度を算定した。
成果 1. 1986-87年度検診受診者35,821人と兵庫県地域がん登録資料(1986-90年)とを照合した。
2. 要精検群から最終検診受診後1年以内に8人、1-2年以内8人、2-3年以内4人、3年以上1人の胃がん患者が発見された。1年以内の内1人は精検受診施設からの報告もれ、3人は直接X線撮影では非癌と報告されていたが、その後の内視鏡検査結果がセンターで把握できていなかった。1年以内発見例は要精検群の0.12%であった。
3. 精検不要群から1年以内10人、1-2年以内16人、2-3年以内16人、3年以上4人の胃がん患者が発見された。1年以内発見例は精検不要群の0.03%である。
4. がん登録の受診動機からの集計ではその後の集団検診からの発見は要精検群では6/21、精検不要群では15/46、健康診断からは各々1人、7人であった。
5. 1991年12月までの全死因死亡票との照合では集検受診後1年以内の死亡は1人(精検不要群)、1-2年3人(要精検2、精検不要1)であった。診断後1年以内の死亡は要精検群1 人、精検不要群8人である。
6. 進行度:早期癌の割合は1年以内発見例では44.4%、1-2年54.2%、2-3年55.0% である。1年以内発見例の深達度は要精検群ではでm25%、sm25%、ss12.5%、s25%、不明12.5%、リンパ節転移25%、精検不要群ではm30%、sm10%、s50%、リンパ節転移は30%であった。
7. 占居部位別ではC領域ではいずれの活動時期でも早期癌で発見されている率は低く、M領域では高い。A領域では1年以内の発見例では早期癌が、1年以降の発見例では進行癌が多い。(次頁へ続く)
8. 早期癌の67.6%(25/37)は陥凹型(Ⅱc 22、Ⅱc+Ⅲ 3)、21.6%(8/37)は隆起型(Ⅰ 5、 Ⅱa 3) であった。進行癌はBorr3が37%(10/27)と最も多く、次いでBorr4、5が各々22.2%を占めた。精検不要群で1年以内発見例ではBorr4の頻度が高かった。
9. 発見時の病巣の長径は早期癌では要精検群では2.1-5cmが、精検不要群では1.1-2cmの頻度が最も高かった。進行癌では要精検群で2.1-5cm が、精検不要群では10cm以上の頻度が高かった。
10. 組織型は早期癌では高分化型管状腺癌の頻度が最も高く、要精検群で58.3%、精検不要群で33.3%あった。集検日から診断までの期間の長い者に中分化管状腺癌、低分化腺癌、印環癌の多い傾向が見られた。進行癌では中分化管状腺癌の頻度が高かった。
11. 行癌で発見され集検時フィルムの再読影で異常を指摘できないか、悪性を疑う所見のなかったものはA領域が多かった。
12. 偽陰性率は1年以内発見全胃がんを偽陰性例とすると15.9%、1年以内発見進行癌のみを偽陰性例とすると9.4%であった。
導入および確認された制度・法律・学説 1. 検診の精度が測定され以下のような改善点が必要な事がわかった。1) 要精検者の精検未受診者をなくす事が必要である。2) 精検医療機関の選別及び精度向上が必要である。(成人病管理指導協議会胃がん部会で討議された。)3) C領域の早期癌での発見が少ない。A領域の病巣示現率が悪い。その後は撮影枚数の増加、撮影体位の追加、高濃度バリュウムの採用が日本消化器集団検診学会の指導のもとに行われている。4) 読影医の養成が必要である。毎年読影医の養成のための講習会が開かれている。5) 撮影技術の向上が必要である。成人病管理指導協議会胃がん部会で毎年間接フィルムの読影審査、施設の実地検査と指導を行っている。また技師の講習会も実施している。
2. がん登録ファイルと受診者ファイルの記録照合方式が確立し、この方法が検診の精度計測に必須のものである事が認識された。
3. 厚生省老人保健健康増進事業「がん検診の有効性評価に関する研究班」の資料として利用された。
主要文献 1. 石田輝子他:胃集検の精度.日集検誌,32(3), 9-16, 1994.
2. がん検診の有効性評価に関する研究班」報告書,日本公衆衛生協会,1998.
3. 藤本伊三郎他:老人保健事業によるがん検診事業の効果的実施法策の開発に関する研究−地域がん登録による新評価方式の開発−平成6 年度報告書.日本公衆衛生協会,1995.