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日本がん登録協議会 > がん登録・がん統計について |
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がんを征圧するために、世界中で「がんとの戦争」が繰り広げられており、わが国においても、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」をスローガンとしてがん対策が進められています。「がんとの戦争」は、まず、がんの実態を把握し、問題点・改善点を明らかにすることから始まります。それに基づいて対策を考え、実施し、その成果を評価する際にも、対策を実施した後のがんの実態に関する資料が必要です。
がん登録のデータから算出される、がんの罹患数・率、がん患者の生存率などのがんに関する統計値は、「がんとの戦争」における、がん対策・がん予防の立案・評価や、がん医療の向上に欠くことができない資料です。ところが、これらのがん統計は、数値だけをみて判断すると、思いもよらない迷い道に国民を導く危険性を孕んでいます。がん統計は、電子体温計のように、ボタンひとつで数値が計測されるわけではありません。その元となるデータを蓄積するために、わが国では、全国がん登録事業において、地方公共団体、医療機関、研究機関などの多数の機関・施設・医師・職員・関係者らが、限られた予算の中、がん患者一人一人、腫瘍一つ一つの資料を地道に積み重ねています。がんの資料の収集方法に偏りがあったり、収集された資料の整理・集計に誤りがあったりすると、がんの実態とかけ離れた統計値が算出されるのは自明です。また、数値が示されても、その内容が信頼に足るものであるか否かを評価する機構もありません。誤った資料を基にした誤った対がん戦略は、国民にとって大きな不利益となるでしょう。
がん登録における情報の収集方法の標準的な規格の整備は、第3次対がん10か年総合戦略におけるがん研究の大きな柱の一つであり、研究班において積極的な標準化の作業が行われ、がん登録推進法の基礎となりました。このような状況を知らずに、様々な場で公表される数値だけを拾い上げてがん統計を見ることは、縮尺も書いていない、誰が何を基にして、いつ作ったかもわからない地図と、どの方角を向くかもわからない方位磁石をもって、旅に出るようなものです。がん統計の一人歩きが、個人や社会に及ぼす影響は、計り知れないものがあります。
このページでは、「がんの罹患」、「がん患者の生存率」、「がん登録」、「がん登録が役立った例」をキーワードとして、がん登録を基にしたがん統計がどのように算出されているのか、どのような点に注意して数値を読み、解釈すればよいか、実例を取り入れて説明します。このページを通じて、信頼に足る情報がふるい分けられ、それが有効に活用されること、また、全国がん登録事業の推進とともに、信頼性の高いがん統計の整備が充実することを期待します。
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テーマ
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みどころ・落とし穴
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がんの罹患数 |
罹患数の定義
がん罹患数の計り方 |
罹患数と罹患率 |
数と率
分子(罹患数)と分母(人口)
粗率・年齢階級別率
年齢調整の必要性
年齢調整罹患率
標準化罹患比
累積率
性別と男女計:足し算?平均? |
多重がん |
多重がん・重複がん・多発がん
多重がんを区別する意義
多重がんの判定基準
多重がんの危険性の計り方 |
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テーマ
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みどころ・落とし穴
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生存率とは |
生存率の意味
中途打ち切り例(censored cases)
実測生存率、補正生存率、相対生存率 |
実測率の計算方法 |
必要な項目
観察終了日の設定方法
直接法
生命保険数理法
Kaplan-Meier 法 |
部位・性別・年齢 |
がんの部位による生存率の違い
性別・年齢による生存率の違い
地域・施設で比較する場合の注意点 |
影響を及ぼす要因 |
集計対象の範囲
予後調査の方法と精度
進行度の影響 stage migration
他死因による死亡の補正方法 |
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テーマ
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みどころ・落とし穴
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がん登録とは |
がん登録の定義
がん登録とがん登録推進法 |
全国がん登録の概要 |
全国がん登録のデータの流れと役割
全国がん登録実施の根拠
登録精度の指標:DCO, DCN, MI比, HV割合・MV割合
わが国の地域がん登録の歴史 |
世界のがん登録 |
国際機関:IARC、IACR
米国:SEER、NPCR、NAACCR
EU:ENCR、Eurocare、Eurocim
アジアのがん登録 |
資料の活用 |
利用方法の種類
罹患・生存率の実態把握
特定集団におけるがん発生状況の把握
資料利用の手続き |
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