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婦人科集団検診受診率別の罹患率、死亡率の算出によって検診受診の効果を検討[2024.03.28] |
婦人科集団検診受診率別の罹患率、死亡率の算出によって検診受診の効果を検討
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分野 |
1.がん対策・企画(1次予防),2.がん検診(2次予防),5.疫学研究・研究推進 |
活動時期 |
1997年,1999年 |
活動地域 |
兵庫県 |
活動主体 |
兵庫県地域がん登録 |
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背景 |
子宮頚がんを対象とした婦人科集団検診は昭和30年代後半から行われ広く普及している。検診の効果に対し異議を唱える人も有り兵庫県での検診効果を検討する必要があった。 |
主な活動内容 |
1. 全県での子宮がんの罹患率と死亡率を1974-93年につき算出した。
2. 県に報告された1984-93年の各市町毎の検診受診率から10年平均受診率を求め、受診率20%以上と10%未満地域で1973-93年の罹患率、死亡率を算出した。
3. 各地域毎に死亡率の減少率/罹患率の減少率比を求めた。
4. 受診率の高い地域と低い地域で上皮内がんの割合を比較した。
5. 1989-93年の平均受診率と各市郡の上皮内がんの割合の相関を求めた。 |
成果 |
1. 全県での年齢調整罹患率は(世界人口使用)1974〜78年全子宮22.1、浸潤がん19.5、1989-93年全子宮15.0、浸潤がん12.1、死亡率は各活動時期9.4、5.5であった。全子宮の罹患率は32.2%、浸潤がんの罹患率は38%減少し死亡率は40.9%減少した。全子宮がんでは死亡率の減少は罹患率の減少の1.3倍、浸潤がんでは1.1倍であった。
2. 受診率20%以上地域では1974-78年の罹患率は全子宮16.9、浸潤がん12.9、1989-93年全子宮13.6 、浸潤がん10.8、死亡率は各々6.3、5.1である。全子宮では罹患率は19.7%減少、浸潤がんでは罹患率は16%、死亡率は19.7%減少した。浸潤がんでは死亡率の減少率は罹患率の減少率の1.2 倍である。
3. 受診率10%未満地域では1974-78年の罹患率は全子宮21.4、浸潤がん19.5、1989-93年全子宮15.6、浸潤がん12.5死亡率は各活動時期9.4、5.8であった。罹患率は全子宮で27.1%、浸潤がんで38.2%減少、死亡率は38.2%減少した。浸潤がんでは死亡率の減少率は罹患率の減少率の1.1倍であった。
4. 1974-78年では浸潤がんの罹患率及び死亡率は受診率の高い地域で有意に低かった。1983年までこの傾向がみられたが1989-93年では受診率の高い地域で浸潤がんの罹患率、死亡率は共に受診率の低い地域より低いが有意ではなくなっている。
5. 全子宮の中に上皮内がんの占める率は1974-78年では受診率20%以上の地域では24%に対し10%未満の地域では9%で受診率の高い地域で高い。(DCO 率は20.4%と15.8%)しかし1989-93年では共に20%で差はなくなってきている。
6. 1989-93年の平均受診率と各市郡の上皮内がん割合の相関を求めると緩い正の相関がみられ受診率の高い地域で上皮内がんの割合が高い傾向が見られた。 |
導入および確認された制度・法律・学説 |
1. 生活環境の変化等によりいずれの地域でも子宮がんの罹患率は減少している。死亡率も減少しているが、罹患率とほぼ平行して減少しており、罹患率の減少が大きな要因である。
2. 1974-78年では受診率の高い地域で有意に浸潤がんの罹患率、死亡率は低く、全子宮がん中に占める上皮内がんの割合も高かった。検診による死亡率の減少効果は1980年前半までみられているが、それ以降は罹患率の減少、予防医学的知識の普及によりすべての地域で死亡率は減少している。
3. 受診率の高い地域でも1989〜93年の死亡率は受診率の低い地域と差がない。漫然と検診を行うのでなく受診対象、受診間隔の設定等に工夫が必要なことを示唆している。 |
主要文献 |
1. 石田輝子他:胃及び婦人科集団検診の効果の検討.兵庫県立成人病センター紀要文献
2. 石田輝子:兵庫県がん登録を用いた検診効果の検討.JACR Monograph No5「地域がん登録の予防医学への貢献」,33-39 ,2000. 石田輝子他:兵庫県がん登録からみた前立腺、膀胱癌の医療評価.兵庫県立成人病センター紀要16 巻,1-12 、印刷中 |
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