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大腸良性ポリープの大腸がん罹患リスクとポリープ切除によるがん発生の抑制効果の検証[2024.03.28]

大腸良性ポリープの大腸がん罹患リスクとポリープ切除によるがん発生の抑制効果の検証

分野 3.臨床医学(3次予防),5.疫学研究・研究推進
活動時期 1987年~1995年
活動地域 大阪府
活動主体 大阪府がん登録
 
背景 大腸がん検診の導入により、大腸良性ポリープが多数発見される可能性があるが、その自然史、またそれが切除された場合の大腸がん罹患リスクの低減については十分な評価がなかった。本研究では府内3施設で診断した多数の良性ポリープ患者を大阪府がん登録との照合により追跡し、その後の大腸がん発生を漏れなく調べ、ポリープの性状別、さらにはポリープ切除実施の有無別に発生率を比較した。
主な活動内容 1. 府内3施設で大腸内視鏡検査を初めて受けた大阪府在住者の内、「著変なし」1,181名、および「良性ポリープ」1,185名を追跡対象とした。後者はポリープ「切除」群676名と「非切除」群756名に分けても解析した。なお追跡開始後に切除を受けた247名は、その前後で各々「非切除」、「切除群」に振り分けた。
2. 大阪府がん登録と照合し、上記対象から初回検査日以降1992年末日までに大腸がんに罹患した者を漏れなく把握した。平均観察期間10.9年の内に、「著変なし」群、「良性ポリープ」群より、各々12名、39名の大腸がん罹患を把握した。
成果 1. Kaplan-Meier 法により算出した大腸がん10年累積罹患率は「著変なし」群1.0%、「良性ポリープ」群2.9%であり、両群に有意差を認めた。
2. ポリープ「切除」群での大腸がん10年累積罹患率は2.2%、一方「非切除」群では3.5%であり、両群間に有意差を認めた。
3. 「切除」群と「非切除」群の間でポリープの病理学的諸要因の分布を比較すると、前者は後者に比べ、長径が大きく、組織型が腺腫で、形態が有茎または亜有茎で、また個数が複数のものの割合が大きい傾向がみられた。そこで、群間での上記諸要因の分布の違いを調整したうえで、ポリペクトミーの大腸がん罹患抑制効果をCox比例ハザードモデルにより解析した。性、年齢、検査活動時期以外に、ポリープの性状に関する要因をも調整するとハザード比は0.31-0.49と1より有意に小さくなった。
導入および確認された制度・法律・学説 1. 観察的手法に基づく調査の限界はあるが、本研究は良性ポリープ保有者の長期に亘る大腸がん罹患リスクを定量的に示すとともに、ポリープを切除すると、その後の大腸がん罹患リスクが1/2から1/3程度にまで抑制されることを示している。
2. 免疫学的便潜血検査による大腸がん検診が、平成4年度から老人保健事業に取り入れられたが、本研究成果は、検診等を通じて数多く発見される良性大腸ポリープ患者の医学的管理に関する臨床疫学的根拠を与えるものとして高く評価されている。
主要文献 1. Murakami, R. et al.: Natural history of colorectal polyps and the effect of polypectomy on occurrence of subsequent cancer. Int. J. Cancer 46: 159-164, 1990.
2. 村上良介:ポリペクトミーは大腸癌発生の減少につながるか? In 澤田俊夫他:大腸ポリープ–切除基準と癌との鑑別–.日本医事新報社,東京,pp. 71-91, 1996.