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地域がん登録のがん対策および疫学研究への活用[2024.03.28]

地域がん登録のがん対策および疫学研究への活用

分野 1.がん対策・企画(1次予防)
活動時期 1968年~1999年
活動地域 鳥取県
活動主体 鳥取県地域がん登録
 
背景 県は各種がん対策を実施してきたが、それにも拘わらず、がん死亡数、死亡率は増加してきた。これに対し、その実態を把握し、今後のがん対策の資料とする。また、生活習慣病とがん罹患の係わりについてもその解明が嘱望されている。
主な活動内容 1. 鳥取県におけるがん罹患・受療状況の標準集計:性・年齢階級別における部位別がん罹患数を求め、粗年齢調整がん罹患率を算出する。また、入院・手術・放射線治療の治療方法及びX線・内視鏡・組織診などの実施検査についての受療状況についても集計を実施する。いずれも市郡別、市町村別、医療機関別の集計も行う。
2. 血清脂質とがん罹患:生活習慣調査ができた基本健診受診者コホート2,051人について鳥取県がん登録により追跡を行い、初回検診時の血清脂質値とがん罹患について部位別のCox比例ハザードモデルにより解析した。
3. 糖尿病とがん罹患:基本健診受診者について鳥取県がん登録により追跡を行い、糖尿病検診における「要指導」あるいは「要医療」の判定区分の耐糖能異常者群からのがん罹患リスクをロジスティック回帰分析により検討した。
成果 1. 鳥取県におけるがん罹患・受療状況の標準集計:年次推移から鳥取県のがん罹患率は、平成6年までは常に全国値を上回っていたが、近年全国値より下回る。市郡別では倉吉市、鳥取市が全国値より高い。部位別には、胃、女の結腸、直腸、肝臓において全国値を上回っている。肺、乳房、子宮については全国値を下回る。治療方法では全国に比べて鳥取県の入院率はやや低く、手術実施割合は高い。結腸、直腸のがん患者の入院率は全国に比べて鳥取県が高い。放射線治療は、肝臓、肺、乳房で全国に比べて鳥取県が高い。
2. 血清脂質とがん罹患:総コレステロールについては、結腸・直腸がんおよび消化器系がんに149mg/dl以下で調整相対危険度4.30、2.40とそれぞれ有意に高く、HDLコレステロールについては胃がんにおいて61mg/dl以上で0.40と有意に低い調整相対危険度を示した。中性脂肪についてはいずれの部位でも有意な結果は認められなかった。
3. 糖尿病とがん罹患:血糖判定区分からみた耐糖能異常者について全部位では、男2.08、女2.27、全体で2.53とそれぞれ有意に高いリスクが示された。部位別には、結腸・直腸の全体で2.49と高い傾向が認められた他、膵臓では全体で5.10、肺では男3.92、全体で3.06と有意に高く、また腎臓では全体で14.81と有意に高いリスクが認められた。
導入および確認された制度・法律・学説 1. 鳥取県のがん罹患・死亡状況を公表することによって、がん対策の必要性について啓発した。また、県民への情報還元を図ることによって、がん予防に対する関心と理解を深めるだけでなく、がん対策に反映することにより、がん患者の発生の抑制やがんの診断と治療に貢献する。
2. がん予防における血清脂質(総コレステロールおよびHDLコレステロール)の改善に向けた保健指導の重要性を示唆した。
3. 健診受診による血糖判定区分から見た耐糖能異常者は将来がん罹患の高危険度群と推測され、注意深いフォローアップの必要性が示唆された。
主要文献 1. 鳥取県腫瘍録による悪性新生物罹患・死亡の地域性について.第24 回鳥取県公文献衆衛生学会(鳥取),1981. 7.
2. 基本健康診査受診群のがん罹患特性に関する疫学的研究.米子医学雑誌,48(3): 219-235, 1997.
3. 基本健診受診者の糖尿病とがん罹患についてのコホート研究.第69 回日本衛生学会,54(1): 356, 1999.