群馬県施設別生存率 高崎総合医療センター 2007-2008年症例

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がん登録をもとに医療施設ごとの5年生存率が公表されました。
ご覧になる方は、単純に生存率が良い・悪いと比較しがちだと思いますが、早期がん(Ⅰ期Ⅱ期)の割合が低く、進行がん(Ⅲ期Ⅳ期)の割合が高い施設ほど相対生存率が低くなります。Ⅳ期は他の臓器に転移(遠隔転移)のある方なので、長期生存は難しく5年生存率は他の病期に比べて著しく低くなります。Ⅳ期の率が高ければ相対生存率は低くなります。
当院の場合、胃がん、大腸がん、肺がんで早期がんに比べて進行がんの割合が高く、5年相対生存率がやや低くなっています。Ⅰ期、Ⅱ期の手術率が100%になってないのは、他施設で手術を行って、当院で薬物療法や放射線療法を受けている患者さんが含まれているためです。ほとんどのがん腫でⅠ期Ⅱ期の手術は根治的手術が可能です。その後、局所再発や他の臓器への転移が見られなければ、「治癒」となるわけです。再発転移を起こさずに「治癒」とみなされるのが多くのがんで5年経過後、とされているので5年生存率を調べることが大切なわけです。
今回のデータは2007年と2008年に治療を行った患者さんのデータです。当時は紙のカルテでしたので、すべての患者さんについてピックアップできていない可能性もあります。現在は電子カルテになり、がん登録も法制化されたのでほぼ100%ピックアップ可能で、次の公表時には、さらに正確なデータを提示できると思います。
このデータの中で我々が気にするのは生存率=治療成績はもちろんですが、病期判明率と追跡率の高さです。診療録をきちんと管理し、がん登録を正確に行い、データをまとめて次のがん診療に生かしていくことが、地域のがん診療をリードするがん診療拠点病院の役割であると考えるからです。
(独立行政法人国立病院機構高崎総合医療センター 鯉淵幸生)

胃がん(C16)5年相対生存率

各ステージ別の生存率は、全国の各施設とほぼ同等の結果であったと考えられます。

大腸がん(C18-20)5年相対生存率

当院は、がん診療とともに地域の救急医療を担う、高崎・安中地域で唯一の総合病院です。腫瘍による腸閉塞や貧血・下血などの症状を機に発見された進行がん患者さんや、狭心症や不整脈などの心疾患、脳神経疾患などの併存疾患を抱えた患者さんが多いことが特徴です。遠隔転移のあるStageⅣの患者さんや、臓器障害のある患者さんでも、個別のリスクを元に専門職種で検討し、切除や化学療法、緩和治療など、患者さんの意向に合わせて治療の相談を行っています。生存率には、大腸がんが治癒しても残念ながら他疾患で命を落とされた患者さんも含まれます。最近は、早期に発見される患者さんも増え、対象例には内視鏡的切除も行っています。

肺がん(C33-34)5年相対生存率

肺がんはほかのがんと比較して難治性とされております。全がん協の生存率データでは2007年の肺がん5年相対生存率は44.2%、手術例の5年相対生存率は76.4%となっております。当院における生存率はいずれもこれより低くなっております。理由として、当院においてはⅣ期肺がん症例の率が高いということ、手術率が低いことがあげられます。また手術例の生存率については、対象となる手術症例には生存率の低いⅡ期、Ⅲ期症例が含まれていることにより若干低くなっているといえます。

乳がん(C50)5年相対生存率

乳がんは他のがん腫と比べて早期の再発・転移が少なく、5年生存率は比較的良好です。
特に病期Ⅰ、Ⅱ期の症例については全例手術の適応となり、術後5年の生存率はほぼ100%になります。Ⅲ期についても、術前薬物療法の進歩により手術が可能となり、5年生存率も以前よりも改善してきています。
Ⅳ期についてはすでに遠隔転移(骨、肺、肝など)に転移がある症例なので5年間の生存は困難な場合が多いです。したがって、Ⅰ、Ⅱ期に比べてⅣ期が多い施設は相対生存率が低くなります。
Ⅰ期、Ⅱ期の手術率が100%になってないのは、他施設で手術を行って、当院で薬物療法や放射線療法を受けている患者さんが含まれているためです。

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